東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)5号 判決
二 原告は、本件審決が被告における本件商標使用の事実を認定したのは証拠の価値判断を誤り事実を誤認したものであるから違法である、と主張する。
よつて検討するに、成立に争いのない甲第四号証、被告代表者本人尋問の結果とこれにより真正な成立を認めうる乙第一号証の一・二、甲第四号証の添付書類である審決における乙第二号証の一ないし三(写真)に示されているスキー用アンダーシヤツ(黄色)であることに争いのない検乙第一号証並に弁論の全趣旨によれば、被告は、昭和二八年三月に設立された株式会社であり、東京都中央区日本橋室町四丁目一番地に本店を置き、同都中野区中野六丁目三二番四号に営業所を有して、スポーツウエアの製造販売等を業とする者であるが、その製造販売商品のうち、品番七一三〇三のスキー用アンダーシヤツを、少なくとも、
(一) 昭和五一年一一月一八日に長野県下の丸池観光ホテルの売店に五五着
(二) 同年一二月一〇日に同県下の白馬アルプスホテルの売店に九〇着
(三) 昭和五二年二月二八日に同売店に五着
それぞれ納品して販売していること及び右品番七一三〇三のスキー用アンダーシヤツは本件使用商標を附した商品であることが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
そして、本件使用商標が本件商標と同一性を有する商標であること及び右品番七一三〇三のスキー用アンダーシヤツが本件商標の指定商品に包含される商品であることは原告の自認するところであることを併せ考えれば、被告は右(一)ないし(三)の期間において、日本国内で、本件商標と同一性を有する商標を本件商標の指定商品について使用したということができる。
三 そうすれば、本件商標の商標権者である被告は、本件審判請求の登録日(昭和五二年一〇月二〇日であることが、成立に争いのない甲第二号証により明らかである。)前三年以内に、本件商標と同一性を有する商標を、日本国内において、本件商標の指定商品に包含されている商品について使用しているのであるから、商標法第五〇条の規定に基づいて本件商標登録の取消を求める審判の請求を成り立たないとした本件審決に原告主張のような違法はない。
四 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却する。
〔編註その一〕 本件における審決理由の要点および審決の取消事由は左のとおりである。
本件審決の理由の要点
請求人は、本件商標については商標権者、使用権者のいずれもが昭和四九年九月一日から今日に至るまで継続して三年以上日本国内においてその指定商品のいずれについても使用をしていない、と主張するけれども、
1 被請求人の提出した乙第二号証の一ないし三、第三号証の一ないし四、第四号証の一・二によれば、被請求人は、「Master」の文字を要部とする商標(以下「本件使用商標」という。)を附したスキー用アンダーシヤツを、(一)昭和五一年一一月一八日丸池観光ホテルの売店に、同年一二月一〇日及び昭和五二年二月二八日白馬アルプスホテルの売店に、それぞれ納品した事実が認められる。
2 本件商標は、別紙に示すとおりの構成から成るものであるから、これを本件使用商標と比べると、両者は、欧文字部分の綴字を全く同一にするものであり、かつ、それぞれ生ずる唯一の称呼「マスター」を共通にするものであつて、取引の通念上同一の商標と認識されるものであり、前記「スキー用アンダーシヤツ」は本件商標の指定商品に包含される。
3 そうすれば、本件商標の商標権者たる被請求人は、本件審判の請求の登録日(昭和五二年一〇月二〇日)前三年以内に、本件商標と同一の商標と認識される商標を、本件商標の指定商品に包含される商品について使用した事実が推認できるから、商標法第五〇条の規定による本件請求は理由がない。
本件審決の取消事由
1 審決は、その乙第二号証の一ないし三、第三号証の一ないし四、第四号証の一・二に基づいて商標使用の事実が推認できるとしているけれども、これらの証拠は、いずれも右の事実を証明する証拠として不十分なものである。
即ち、審決における乙第二号証の一ないし三は、単に商標「Master」を附したアンダーシヤツの写真に過ぎず、このような写真は、いつでも、誰でも作成できるものであり、実際にある商標がある商品にある時点で使用されていたことを証明する資料及びそのような商標を附した物が商品として存在していたことを証明する資料にならない。また、同乙第三号証の一ないし四、第四号証の一・二には「スキーアンダー」という商品名の記載はあるが、その商品に使用された商標を特定する記載がなく、したがつて、これら文書に記載された商品が同乙第二号証の一ないし三に示されるものと同一の商品であることを証明しない限り、同乙第二号証の一ないし三のものと同乙第三号証の一ないし四、第四号証の一・二のものとの間には何らの関連性も存しない。
一般に、本件のごとき一般大衆を最終顧客とする商品を製造、販売するときは、商品名と共に商標を表示した包装、ラベル、タグ、カタログ等を使用し、また、一般大衆向けの広告をするのが普通である。それにもかかわらず、そのような証拠資料を全く欠除している本件において、前記認定を敢てした審決は、証拠の価値判断を誤り、事実を誤認した違法がある。
2 なお、本件審決の理由中、本件使用商標と本件商標とが同一性を有すること、「スキー用アンダーシヤツ」が本件商標の指定商品に包含されること、は争わない。
〔編註その二〕 本件に関する商標は左のとおりである。
<省略>